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晴乃皐の心赴くままに綴る言葉達
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blog start 20060817



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「灯、ちょっといいか、明日なんだけど」

 背後からふいに聞こえた声に、灯はハッとして窓にかけた手を離した。

「灯?」

「カーテンを…」

閉めようとして、と言いかけた灯は半ば予想していた窓の外の光景にたじろぎ、息を呑んだ。

 そこには誰の姿も無かった。

 激しい動悸を抑える事が出来ず、灯は窓枠に手を突いて俯いた。

「どうした?具合でも悪いのか?」

貫が心配そうに覗き込んで来る。

 

 その晩灯は微熱を出して寝込んでしまった。貫はここへ来てからの灯の様子が以前とは全く異なっていた事を感じてはいたが、あえて深くは詮索せずにいた。

 灯がこちらへ来てからというもの、毎日のように灯の母である貫の姉から電話があった。灯は迷惑をかけていないか、あまり長く滞在するのは貫の迷惑になるから早く帰るよう伝えて欲しいという内容で、かかって来る度灯に取り次いで欲しいと言われたが、貫はそうしなかった。

 姉の灯への執着は、結婚前には自分に向けられていたものだった。悪気は無いのは分かっていても、それを疎ましく思ってしまう心が貫を郊外のこの街へ転居させた。

 自分が灯に対して親身になってしまうのは、その姉の執着を現在一身に受けている灯に対する罪滅ぼしの意識が働いているのかもしれないと貫は考えてしまう。

「ごめんな、側にいられなくて」

 赤い顔をして眠る灯の寝顔を見ながら、貫は呟いた。

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