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晴乃皐の心赴くままに綴る言葉達
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blog start 20060817



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 叔父の家に来てから、一週間が過ぎようとしていた。

 灯は森の家にはあれ以来なんとなく近付けずにいる。

 その日は夕方から急に暗雲が立ち込め、雷鳴を伴った強い夕立になった。灯は自分の部屋に宛がわれた座敷で、外の雨音に耳を傾けながら本を読んでいた。貫は仕事をしているのだろう。家の中は外の喧騒とは打って変わり、静まり返っていた。

 ふいに、灯は座敷の窓を叩く、雨音とは異なる音に気が付いた。不審に思い、窓際に近付いた所で窓の外を凝視し、息を呑んだ。

 窓の外に立っていたのは、あの日森の家にいた徇という青年だった。

 黒い傘を差し、青ざめた顔でずぶ濡れになって徇はそこに佇んでいた。夕立の強い雨は、傘など微塵も役立たない事を示している。

 灯は思わず窓辺のカーテンを引こうとした。しかし思うように指は動かず、そのまま徇と窓ガラス越しに対峙する形になる。

 徇の、形の良い唇がふいに動いた。

「どうして来てくれないの」

 夕立の最中、窓ガラス越しに、囁く声が届くはずは無かった。しかし、その声は灯の耳に届いていた。

 灯は全く動くことも出来ず、ただ徇の様子を凝視していた。

「ずっと待っているのに」

 再び徇が口を開き、その目線が灯の物とぶつかる。それと同時に灯は窓の鍵に手を掛けていた。

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